デンマーク人指揮者。1958年、アメリカ・ペンシルベニア州ウェストチェスター生まれ。
デンマーク王立音楽院ピアノ科卒業後、ボローニャ・サン・マルティーノ音楽院、ザルツブルグ・モーツァルテウム、パリ・エコール・ノルマル音楽院で指揮とピアノを学んだほか、フランコ・フェラーラ、カルロ・ゼッキ、タチアナ・ニコライエワ、ヤコップ・ギンペル等数々の巨匠に師事する。
1992年から1999年まで、オーストリア・インスブルックのチロル州立劇場の首席指揮者を務める。カール・ニールセン「Maskarade (マスカレード)」とルーズ・ランゴー「Antikrist (反キリスト)」の録音は、イギリス・グラモフォン誌で2000年の最優秀オペラ録音に選ばれ、この時期の活動のハイライトのひとつとなる。
1999年から2003年までは、ウィーン・フォルクスオーパーの指揮者兼キャスティング・ディレクター、2005年より現在に至るまで、オーストリア・オーバーエーステライヒ州のシュタイヤー音楽祭にて音楽監督を務める。
オペラのエキスパートとして知られるニルス・ムースは、世界各地の大規模なプロダクションに指揮者として関与。RAI(イタリア国営放送)で放映されたマチェラータ・オペラ・フェスティバルによるドニゼッティ オペラ 「愛の妙薬」 (アルトハウス・ミュージックよりDVDがリリースされている)、ギリシャのカルチャー・オリンピックで上演されたロッシーニ「コリントの包囲」、モスクワ並びにデンマークの国際ハンス・クリスチャン・アンデルセン・イヤーで上演されたドヴォルザーク「ルサルカ」、中国国営放送での放映のために上演されたヴェルディ「アイーダ」 などがその一例として挙げられる。
これまでニルス・ムースと共演した歌手には、カーティア・リッチャレッリ、ルチアーナ・セッラ、アーウィン・シュロット、ダニエラ・バルチェローナ、アドリアン・エレート、マルクス・ヴェルバ、イリダール・アブドラザーコフ、アンゲラ・デノケ、ヴェルナー・ホルヴェーク、マウリツィオ・ムラーロ、グレゴリー・クンデ、カルメン・ジアンナッタッシオ、シュテッフェン・ミリング、ヴォルフガング・コッホ、中嶋彰子等が挙げられる。
交響楽団の指揮者としては、ライプツィヒ・MDR交響楽団、ベルリン交響楽団、アルトゥーロ・トスカニーニ・オーケストラ、コリアン・シンフォニーオーケストラ、東京都交響楽団、関西フィルハーモニー管弦楽団、バンクーバー・オペラ・オーケストラ、チェコ室内フィルハーモニー管弦楽団、アメリカ・シュトラウス交響楽団、スロヴァキア・フィルハーモニー管弦楽団、などと共演している。
録音ではグラモフォン、アルトハウス・ミュージック、グラモーラ、ダナコード、ダイナミック、デンオン、プライズラー・レコード・ウィーン等からCDやDVDがリリースされている。
教育者としても国際的に知られるニルス・ムースは、これまでにイタリア・ボルツァーノのモンテヴェルディ音楽院、オランダ・アムステルダムのオペラスタジオ・ネザーランド、東京新国立劇場オペラ研修所、韓国国立劇場オペラアカデミー、ウィーン国立音楽大学、アメリカ・オーバリン音楽院、カルフォルニア・オペラアカデミーなどで後進の指導にあたっており、ベルヴェデーレ(ウィーン)、トーティ・ダル・モンテ(ロヴィーゴ)等数々の主要国際コンクールの審査員も務めている。
このほか2008年から2011年まで、カナダ・マギル大学、アメリカ・スタンフォード大学、ニューヨーク大学、ノルウェー・トロムソ大学、スウェーデン・ストックホルム工科大学などの国際研究機関で進めてられている研究プロジェクト「The World Opera」の音楽監督を務めた。
現在、オットー・エーデルマン協会のアーティスティック・アドバイサー、並びにモーツァルトハウス・ウィーンのアーティスティック・アドバイザーを務め、2013年9月よりウィーン私立音大、オペラ科の教授兼音楽監督に就任することが決定している。
1981年ヤコブ・ゲーゼ賞、2000年デンマーク放送賞受賞。
(2013年6月)